※当記事の情報は投資助言を目的としたものではありません。投資はご自身の判断と責任で行ってください。
この記事で伝えたいこと
私は2015〜2016年にIPO投資に本格的に取り組みました。16社の証券口座を開設し、約180銘柄に対して延べ約1,000回の申込作業をこなしました。当選は7回、利益合計は476,200円です。
当選データだけ見ると悪くない数字です。しかし「約1,000回の申込作業をして47万円」という現実と、当時と比べて明らかに旨味が減った最近のIPO環境を踏まえ、現在はやめています。
この記事では実際のデータをもとに、IPO投資のリアルを正直に書きます。
IPO投資とは何か
IPO(新規株式公開)とは、未上場の企業が株式市場に上場する際に、一般投資家向けに株式を販売することです。上場直後に株価が公募価格を大きく上回るケースが多く、当選すれば初値売りで利益を得やすいとされています。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ①ブックビルディング | 購入希望価格と株数を証券会社に申し込む |
| ②抽選 | 応募者多数の場合は抽選で当選者を決定 |
| ③購入 | 当選した場合、公募価格で株を購入 |
| ④上場・売却 | 上場初日に売却して利益を確定するのが基本 |
私のIPO投資の実態
当選確率を上げるために16社の口座を開設した
IPOは複数の証券会社から応募することで当選確率が上がります。私は当時、以下の16社に口座を開設して応募していました。
| 証券会社(16社) |
|---|
| SBI証券 / 楽天証券 / 野村証券 / 大和証券 / SMBC日興証券 / マネックス証券 / 松井証券 / カブドットコム証券 / 岩井コスモ証券 / みずほ証券 / 三菱モルガン・スタンレー証券 / 東海東京証券 / 岡三オンライン証券 / ライブスター証券 / いちよし証券 / HS証券 |
ただし全銘柄に全社から応募できるわけではなく、各銘柄の幹事証券会社が限られています。感覚的には1銘柄あたり平均5〜6社から応募していました。
申込作業の実態
- 2015年:97社上場 → ほとんどに応募
- 2016年:92社上場 → ほとんどに応募
- 合計約180銘柄 × 平均5〜6社 = 延べ約1,000回の申込作業
さらに各口座に応募資金を振り分ける作業も毎回発生します。銘柄ごとに申込期間・公募価格・当選株数が異なるため、資金管理だけでもかなりの手間でした。
2年間の当選実績と損益
2015年の当選実績
| 銘柄 | 公募価格 | 当選数 | 幹事証券 | 初値 | 損益 |
|---|---|---|---|---|---|
| ヘルスケア&メディカル投資法人(3455) | 110,000円 | 1口 | 日興 | 170,000円 | +60,000円 |
| モバイルファクトリー(3912) | 1,410円 | 100株 | SBI | 2,812円 | +140,200円 |
| イトクロ(6049) | 1,930円 | 200株 | SBI | 2,010円 | +16,000円 |
| ラクト・ジャパン(3139) | 1,400円 | 100株 | 野村 | 1,400円 | ±0円 |
| 2015年合計 | – | – | – | – | +216,200円 |
2016年の当選実績
| 銘柄 | 公募価格 | 当選数 | 幹事証券 | 初値 | 損益 |
|---|---|---|---|---|---|
| LINE(3938) | 3,300円 | 100株 | 野村 | 4,900円 | +160,000円 |
| JR九州(9142) | 2,600円 | 100株 | 野村 | 3,100円 | +50,000円 |
| JR九州(9142) | 2,600円 | 100株 | SMBC日興 | 3,100円 | +50,000円 |
| 2016年合計 | – | – | – | – | +260,000円 |
2年間の総括
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 応募銘柄数(概算) | 約180銘柄 |
| 延べ申込作業数(概算) | 約1,000回 |
| 当選回数 | 7回(うちJR九州は2口座から当選) |
| 利益合計 | 476,200円 |
| 実質的な当選確率 | 約4%(銘柄ベース) |
2015〜2016年と最近のIPO環境の比較
私がIPO投資に取り組んでいた2015〜2016年は、IPOの初値が公募価格を大きく上回る銘柄が多い時代でした。しかし最近はその旨味が明らかに薄れています。
| 指標 | 2015年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 上場社数 | 97社 | 65社 |
| 初値が公募価格を上回った割合 | 約86%(84勝11敗) | 約82%(53勝10敗2分) |
| 初値2倍以上の銘柄 | 28社(ロゼッタ+433%、アイリッジ+429%、テラスカイ+350%など) | 5社 |
| 初値4倍以上の銘柄 | 6社(ロゼッタ・アイリッジ・ネオジャパン・テラスカイ・スマートバリュー・エムケイシステム) | 1社 |
| 上昇率トップ | +433%(ロゼッタ) | +約330%(フラー) |
勝率だけ見ると2025年も約82%と悪くありません。しかし「2倍以上になる銘柄がわずか5社」という点が当時との大きな違いです。2015年は私が当選したモバイルファクトリーでも初値が公募価格の約2倍、さらに+433%のロゼッタのような銘柄も複数ありました。当時は「当たれば大きい」という状況でしたが、現在は上場社数も減り、大きな上昇が期待しにくくなっています。
「800万円の待機資金」をインデックス投資に回していたら?
当選確率を上げるため、16口座それぞれに約50万円ずつ資金を入れておく必要がありました。つまり約800万円がIPO待機資金として常に拘束されていた状態です。この資金をインデックス投資に投入していたらどうなっていたでしょうか?
ここでは、IPO待機資金をインデックス投資に投入した場合をシミュレーションしてみたいと思います。
なお、eMAXIS Slim S&P500の設定日は2018年7月、eMAXIS Slimオルカンの設定日は2018年10月のため、2015〜2016年当時これらのファンドは存在していませんでした。ここでは「もし当時これらのファンドがあったとしたら」という仮定で試算します。
パターン①:実際の2015〜2016年のリターンで計算(S&P500・オルカン)
| 年 | S&P500リターン | S&P500資産額(試算) | オルカンリターン | オルカン資産額(試算) |
|---|---|---|---|---|
| 投資開始 | – | 800万円 | – | 800万円 |
| 2015年末 | +0.7% | 約806万円 | -7.5% | 約740万円 |
| 2016年末 | +9.5% | 約882万円 | -0.9% | 約733万円 |
| 2年間の損益(試算) | – | +約82万円 | – | -約67万円 |
実際の2015〜2016年はS&P500が好調だった一方、オルカン(MSCI ACWI)は円ベースでマイナスになっていました。この2年間に限ればIPO投資の約48万円はオルカンより良い結果でしたが、S&P500の約82万円には届きませんでした。
ただし特定の2年間だけでの比較は偏りがあります。長期平均で見るとどうでしょうか。
パターン②:S&P500・オルカンの長期平均リターンで計算
S&P500の1994年〜2024年の過去30年間の年率平均リターンは約9.8%、オルカン(MSCI ACWI)の同期間の年率平均は約7.5%とされています。この長期平均で試算すると:
| 年 | S&P500(年率9.8%) | S&P500資産額(試算) | オルカン(年率7.5%) | オルカン資産額(試算) |
|---|---|---|---|---|
| 投資開始 | – | 800万円 | – | 800万円 |
| 1年後 | +9.8% | 約878万円 | +7.5% | 約860万円 |
| 2年後 | +9.8% | 約964万円 | +7.5% | 約924万円 |
| 2年間の利益(試算) | – | +約164万円 | – | +約124万円 |
IPO投資との比較まとめ
| 比較項目 | IPO投資(実績) | S&P500実績値 | オルカン実績値 | S&P500長期平均 | オルカン長期平均 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2年間の損益 | +約48万円 | +約82万円 | -約67万円 | +約164万円 | +約124万円 |
| 必要な作業 | 約1,000回 | ほぼゼロ | ほぼゼロ | ほぼゼロ | ほぼゼろ |
実際の2015〜2016年の数字だけ見ると、オルカンはマイナスだったためIPO投資の方が良い結果でした。しかし長期平均で見ると、S&P500で約164万円、オルカンでも約124万円となり、IPO投資の約48万円を大きく上回ります。
特定の2年間が良かったかどうかは運次第です。長期的に見れば、約1,000回の申込作業に費やした時間と労力を考えると、インデックス投資を淡々と続ける方が効率的だったと感じています。
IPO投資をやめた理由
① 約1,000回の申込作業は想像以上に重労働だった
毎回の申込には「銘柄調査 → 各口座へのログイン → ブックビルディング申込 → 資金移動」という作業が伴います。これを約2年間、約1,000回繰り返しました。インデックス投資の「設定したら放置」というスタイルとは真逆の手間です。
② 当選しても損益がゼロの銘柄もある
2015年に当選したラクト・ジャパンは初値が公募価格と同じで損益ゼロでした。当選しても必ず利益が出るわけではありません。
③ IPO環境が変わり旨味が薄れた
2015〜2016年と比べて、現在は初値の大幅上昇が期待しにくくなっています。同じ手間をかけても期待できるリターンが減っています。
④ インデックス投資に集中したかった
個別株・レバレッジETFの失敗を経て、シンプルに続けられる投資に絞ることにしました。IPO投資は面白みはありますが、「手間をかけずに資産形成する」という方針とは合いませんでした。
まとめ
2015〜2016年にかけて約180銘柄・延べ約1,000回の申込作業をして、当選7回・利益476,200円という結果でした。当選データだけ見ると悪くありません。しかし1,000回の作業に費やした時間と、16口座の資金管理の手間を考えると、効率の良い投資とは言えませんでした。
さらに2015〜2016年は初値上昇が大きい時代でしたが、現在はその環境も変わっています。今から同じことをやっても、当時ほどのリターンは期待しにくいと思います。
IPO投資を否定するわけではありません。複数口座の管理が苦にならず、コツコツ申し込める方には有効な手段です。ただ私には合いませんでした。
→ 私がインデックス投資だけにした理由は「私がインデックス投資だけにした理由」で詳しく書いています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

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